名刀・虎徹に見る創造性

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『鬼滅の刃』と聞けば、連日、ニュースやテレビでも話題が持ちきりの作品で、知らない人はない、という程の人気ですが、この作品には『日輪刀』という特殊な鋼から造られる日本刀がでてきます。

近年、日本刀に関心のある女性を刀剣女子と言われるそうですが、刀剣女子の生まれる背景にはこのようなアニメやマンガ、ゲーム等の影響が大きくあるといわれます。

今年初旬、小学館から名刀大全という国宝級の日本刀の図鑑が出版されました。
名刀大全は定価3万5千円という高額書籍にも関わらず、発売後に即完売、その後も重版を重ね、10月時点で、第3版が決定しているそうです。

購入者の多くは、また若い女性と言われています。昨今を刀剣ブームと称する人もあるようです。

今回はそんな日本刀にまつわる話を通して多様性について考えてみたいと思います。

稀代の名刀・長曽根虎徹

「折れず、曲がらず、よく切れる」というのは日本刀の謳い文句として有名ですが、切れ味の鋭いことで有名な一振に『虎徹』があります。

『虎徹』は幕末・新撰組の局長、近藤勇の愛刀としても有名で、時代劇等で「今宵の虎徹は血に餓えている」の一節は、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この『虎徹』は江戸初期の刀匠・長曽祢興里(ながそね おきさと)の作品です。

興里は仏門に入って以降は自身を虎徹と名乗るようになり、自身の刀の銘にも虎徹の文字を刻むようになったそうです。

『虎徹(正確には初代虎徹)』の特徴は江戸初期の新刀に分類される日本刀で、反りが浅く、鋼の模様が木目に見える杢目肌(もくめはだ)といわれる造りと言われます。

この「反り」とは日本刀特有の機構で、切断時の衝撃を吸収するため、刀身の湾曲具合を指します。

「反り」は浅い方が、扱い易いのですが、強度の関係で「反り」を浅くするには刀身の鋼をより強靭に鍛える必要がありました。

この点を克服している理由からも、『虎徹』は実用的でかつ観賞用としても当時から人気の刀剣であったといわれます。

当時、山田浅右衛門による試し切りの結果がまとめられた刀工の番付・『懐宝剣尺(かいほうけんじゃく)』では、『虎徹』は最上位のランクである最上大業物14工に選出され、名実ともに天下一の名刀として知られていました。

そんな名刀工・長曽祢興里(ながそね おきさと)ですが、彼は最初から刀工という訳ではありませんでした。

刀工・長曽祢興里とは

長曽根一門はもともと甲冑師(かっちゅうし)の一族で、興里もまた若い頃は北陸で甲冑師を生業(なりわい)としていました。

しかし、時代は天下泰平の江戸に移り、戦が無くなると甲冑の需要は次第に薄れてゆきます。

仕事の無くなった興里は江戸に渡り、齢50歳を過ぎた身でありながら刀工へと転身したと言われています。

一説に拠れば、興里は甲冑師時代に身に着けた古釘や古兜といった「古鉄」の扱いに自信があったため、はじめは『古鉄(こてつ)』を名乗っていたそうです。

甲冑は刀剣や槍の一撃を受け止めてなお、装着者の身を護る必要があるため、甲冑の鋼には高い「強度」や「粘り」が求められます。

興里は甲冑師時代に培(つちか)ったこれら甲冑制作の技術を応用して作刀にあたったことが、反りを浅く、切れ味を鋭くしても刀身が強靭であった『虎徹』の秘密と言われています。

長曽根氏から学ぶこと

刀が不要となった今を生きる私達が、長曽根氏から学ぶことは何でしょうか。

元々門外漢であった刀剣について、長曽根氏は甲冑の技術を用いて創造性を発揮し、他の刀工を凌ぐ結果を残しました。

人生に於いてもまた然り、私達が普段、仕事・勉強・人間関係等、様々な問題解決に際して、違った目線から有益な学びを与えてくれることが沢山あるのではないでしょうか。

当ブログでも様々な話題から人生に大切なエッセンスを発信していますので、一層学びを深めて貰えればと思います。

新幹線の開通

似たような事例に『新幹線』が挙げられます。『新幹線』は旧国鉄(現・JR)が戦後開発した高速鉄道です。

高速鉄道の開発は戦前から続けられていましたが、鉄道を高速化する上で、車体の振動とトンネルを抜ける際の衝撃が最大の問題となっており、当時の鉄道技術者の頭を悩ましていました。

これらの問題を解決したのは意外な人々でした。
戦後、軍需工場や軍関係の研究施設が解体され、多くの技術者が職を失いましたが、国鉄がそれら多くの人材を獲得したことが、大きなターニングポイントになりました。

その中には、戦時中、「ゼロ戦」等の航空機を開発していた元軍関係の技術者達がありました。

彼らは鉄道に関しては門外漢ではありましたが、高速飛行時の振動軽減や、空気抵抗の問題は、航空機開発で専門分野であったため、それら航空機開発の技術や知識を惜しみなく投入し、今日の流線型の車体を備えた新幹線の原型を造り上げました。

東京-大阪間3時間の運行は夢のまた夢と言われていましたが、彼ら航空機技術者の技術と執念により、今日の新幹線の開通に至りました。

まとめ

近年、「リベラルアーツ」という言葉が取り上げられることが増えています。

日本語では「教養」という言葉が訳として使われますが、
文学、哲学、数学、物理学、音楽、芸術など、
幅広い分野での基礎知識を学ぶことと言われます。

これまで日本の大学等教育機関では専門知識偏重でスペシャリストの育成が重視されてきましたが、

学校の試験のような「答えがある問題」には対応できても、実社会に於いて、「答えがない問題」に遭遇したとき、専門知識だけでは中々問題を解決できません。

そのような場面に直面した際、役立つのが他の分野への関心であると近年注目されています。

先程も述べましたが、人生の様々な問題解決に際して、有益な学びを与えてくれることが沢山有りますので、ぜひ他の記事も読んでみてください。

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小塚リョウ

猫とカレーをこよなく愛し、趣味は日曜大工とプログラミングです。株式会社チューリップ企画の情報システム担当のエンジニアとして働いています。 多くのモノや情報があふれる時代だからこそ、モノを通していかにみなさんの生活を豊かにするかということが、今エンジニアが、社会から求められていることだと思います。日々情報システムを開発する一方で、エンジニアの視点から、どうすれば豊かに暮らせるか、研究して情報発信していきたいと思います。
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