「言うことを聞かない部下に腹が立つ」怒りの心と部下への向き合い方

知人から聞いたことですが、部下が思い通りに動いてくれないのでいつもイライラするそうです。

「楽は下にあり」と言われるように、立場が上になるほど責任やプレッシャーは増えます。

しかし、感情のまま怒りをぶつけては職場の雰囲気はいっそう悪くなりますし、パワハラと訴えられるかもしれません。

部下に腹が立つとき、どのように受け止めたら良いのでしょうか。

腹が立つ本当の原因を知る

腹が立つときは「あいつが悪い、こいつのせいだ」と周りを責める気持ちが出てきます。

しかし、部下に腹が立つのは、実は上司として真面目に仕事をしている証拠なのです。

もし、何の責任感もなければ、部下が不真面目であってもそこまで腹は立たないでしょう。

日々、一生懸命仕事をしているからこそ、部下に腹が立つのではないでしょうか。

では、どんな時に部下に腹が立つか考えてみましょう。

・部下が真面目に仕事をしてないように見える

・問題が起こると自分の管理責任が問われる

・部下が失敗した後始末を自分がしないといけない

・言うことを聞かない部下から尊敬されてないように感じる

などではないでしょうか。

これらの共通点は、部下が真面目に仕事してくれないと「評価されたい」という自分の名誉欲や「儲けたい」という財欲が損なわれることです。

このように腹が立つのは自分の欲が妨げられるからだ、と仏教では教えられます。

私たちを動かす欲の心

仏教では人間のことを「煩悩具足(ぼんのうぐそく)の凡夫」と言います。

「煩悩」とは煩わせ悩ませるもの、「具足」とはそれでできている、「凡夫」とは人間という意味です。

一人一人が108の煩悩で出来上がっていますが、中でも特に私たちを悩ませ苦しめるものを三毒の煩悩といいます。

◎三毒の煩悩・・・欲の心、怒りの心、ねたみそねみの愚痴の心

欲の心でも代表的なものが五欲で、食欲、財欲、名誉欲、色欲、睡眠欲があります。

今回の例では、主に名誉欲と財欲が妨げられて部下に腹が立つのでしょう。

◎名誉欲とは、良く見られたい、悪口言われたくないという心です。

部下が失敗すれば、上司である自分の管理責任が問題になり、さらに上の上司や周りの同僚からの評価が下がると思います。

「仕事がデキる人と思われたい」という名誉欲が傷つけられるので、部下に腹が立つのです。

◎財欲とは、お金が欲しい、損したくないという心です。

部下が真面目に仕事をして成果を出さなければ、会社の売り上げも下がります。

会社の売り上げが下がれば、自分のボーナスも下がり、財欲が妨げられるので、部下に腹が立つのです。

腹が立ったときは

腹が立ったときは、周りの人のせいにする心が起きてこないでしょうか。

「あいつのせいだ、こいつのせいだ」と周りを恨んでは余計に自分が苦しくなります。

相手の一挙手一投足が気にさわり、神経をすり減らします。

腹を立てると、体中に毒素が回り健康も害します。

また相手を恨む気持ちは何となく伝わり、部下も余計に仕事のやる気を無くすかもしれません。

相手を恨むと気が晴れるどころか、自分の心身にも悪影響ですし、相手や周りの空気も悪くさせてしまうのです。

腹が立ったときは、どんな欲が妨げられているのかと客観的に振り返ってみてはいかがでしょうか。

「部下のため、会社のため」とは建前で、本音では自分が評価されたい、儲けたいという心が根底にあるのではないでしょうか。

自分の心を見つめたとき、その怒りは決して誇れるようなものではないと気づきます。

部下への向き合い方

仏教では自分に現れた結果はすべて自分の行いが生み出したものと教えます。

部下が不真面目であれば、その悪い行いの報いは部下自身が受けていかねばなりません。

自分が腹を立てれば、それだけ悪い行いをすることになりますから、慎むようにした方が良いのです。

では、部下の言動をほったらかしておいて良いのでしょうか。

そうではありません。

部下自身も成長しませんし、自分や会社も迷惑を受けていることは事実です。

部下が受け取りやすい言葉やタイミングで、どういう点に迷惑しているのかを伝える必要があります。

その時に大事なポイントは、自分の感情のままに怒りをぶつけるのではなく、部下の成長を願う心を持つことです。

なかなか難しいかもしれませんが、そうして接していけば、部下も少しずつ言動が変わっていくのではないでしょうか。

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九条えみ

チューリップ企画では、お客様サポートおよびウェブでの情報発信を担当しています。仏教を学んで約10年。仏教の視点からお悩み解消のヒントをご紹介できればと思います。
心が穏やかになった人へ
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