正しく読みやすい文章が書けますか?|校正中によく見かける注意点(前)

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こんにちは、本ブログで校正を担当しているこんぎつねです。

突然ですが、あなたは正しく読みやすい文章が書けているでしょうか?
自分ではちゃんとした文章が書けているつもりでも、案外間違っていたりするものです。

友人とのLINEでのやり取りや個人的なブログならば間違った言葉遣いをしてもいいですが、仕事上や公的な文章だとそうはいきません。
取引先や会社のブログ記事を読んだ人から「この会社の人、おかしな日本語書くなあ」と思われ、悪い印象を与えてしまいます。

今回は校正中によく見かける間違いを通して、私が特に注意して見ている点を紹介したいと思います。

ただ私は新聞社の校閲部でもなければ、出版社の編集でもないため、主語と述語の関係や、助詞の使い方など本格的に文章の勉強をしたい場合は、私が参考にしているナタリーさんの「新しい文章力の教室」や朝日文庫さんの「日本語の作文技術」などを読まれることをおすすめします。

正しい日本語とは?

そもそも正しい日本語とは何でしょうか。

「なにそのコーデ、エグいんですけど。トキトバわきまえてて、マジオシャンティーじゃね」は間違った日本語で、「その服の組み合わせは素敵です。時と場所をわきまえていて、とてもおしゃれですね」は正しい日本語だとなぜ言えるのでしょうか。

正しい日本語を”正しい文法に沿った日本語”とすると、規範文法に沿った日本語が正しい日本語となります。
規範文法とはその言語の文法の規範のことを言います。
一方で言語学から見た正しい日本語は現在、日本人が使っている日本語で、こちらの文法を記述文法と言います。
言葉は流動的なので、”今は”正しい日本語としか言えません。

例えば「食べる」は「たまはる」から出てきた言葉で、元々は「食う」の謙譲語でしたが、今は謙譲の意味合いが薄れ、逆に「食う」と言うと下品な印象を与えます。
そして最近は「どうぞ頂いてください」のように「頂く」を「食べる」と同等に使う人が増えてきています。

こうなると何が正しい日本語なのか自体がよくわからなくなってきます。

一般的には、会話の場合には規範文法通りでなくてもある程度は許され、文章にする場合は規範文法通りに書いておくのが無難です。
ですのであなたが多くの人に見られる文章を書かれるのでしたら、規範文法は知っておかれたほうが良いかと思います。

前編である今回は、私がよく目にする間違いの中でも、文章中だけでなく話し言葉としても目上の方やお客様相手には控えたほうがいい言葉遣いを取り上げます。

ら抜き言葉

まずは有名な「ら」抜き言葉です。
間違った日本語としてよく出てくるので皆さんも「ら抜き言葉は間違いですよ」と聞いたことがあると思います。
しかし実際には「ら」抜き言葉が時々見受けられます。

よく見る例は

  • 見れる→見られる
  • 出れる→出られる
  • 食べれる→食べられる
  • 来れる→来られる

です。

「ら」抜き言葉は会話内で使うと可能の意味がわかりやすくなるので、話し言葉では認めてもいいのではないかという意見が最近出てきていますが、書き言葉ではやはり良くありません。

「ら」抜き言葉になる可能性があるのは動詞の中でも五段活用以外の動詞です。
小中学生のころ、「五段活用動詞は後ろに『ない』を付けると『~ぁない』になる(例えば「歩く」→「歩かぁない」)」のようなことを習ったと思います。
「見る」は上一段活用動詞、「出る」は下一段活用動詞、「食べる」は下一段活用動詞、「来る」はカ行変格活用動詞なので、可能を表すときには助動詞の「られる」を使います。
「られる」の「ら」は省略できません。

「いや、そんな活用なんて難しいこと考えながら書けないよ」と言われる方も多いと思いますので、ひとまずはよく間違われる上の4つと

  • 起きれる→起きられる
  • 決めれる→決められる
  • 着れる→着られる
  • 寝れる→寝られる
  • 借りれる→借りられる
  • 居(い)れる→居(い)られる

あたりを覚えておけばいいかと思います。

二重敬語

二重敬語も有名な間違いです。
尊敬を表す動詞にさらに尊敬の助動詞「れる」「られる」を付けてしまうパターンです。

尊敬表現には尊敬の助動詞を付ける以外に「お(ご)~になる」という表現があり、こちらのほうがより敬意が高いとされています。
また「言う」→「仰る」や「食べる」→「召し上がる」など、動詞が変化する場合もあります。

これらの尊敬表現にさらに「れる」「られる」を付けて、

「お越しになられる」
「仰られる」
「お召し上がりになられる」

のように1つの言葉に敬語表現が重なってしまった表現を二重敬語と言います
これは間違いです。

私がよく見るのは

「仰られる」
「ご覧になられる」

です。

敬語の使い方については非常に多くのサイトで細かく説明されていますし、正しく学ぶには文化庁の敬語の指針を読んで勉強しないといけないので、本記事ではこれ以上の説明は止めておきます。

「ら」抜き言葉と二重敬語は文章中はもちろん、お客さんと話しているときに使ってしまうと「この会社、社員教育ちゃんとできているのかな」とお客さんに不快な思いをさせてしまうため、特に注意が必要です。

おられる

二重敬語や「ら」抜き言葉と違って「おられる」は間違いではないのですが、間違いだと感じる方が多い言葉です。

ラ行五段活用動詞「おる(居る)」に尊敬の助動詞「れる」が付いたものですが、「おる」を「いる」の謙譲語の「おる」と考えて、「『おられる』は1つの言葉に謙譲表現と尊敬表現が混在しているからおかしい」と感じる方がいらっしゃいます。

確かに謙譲語の「おる」に「れる」を付けたものならば「致される」「申される」などと同じくおかしいのですが、「そこに存在している」という意味の「おる(居る)」は一般動詞ですから「お(居)られる」は間違いではありません。

「おる」を方言として使う西日本(愛知、岐阜、福井嶺北、近畿の一部を除く中部地方以西)では「おられる」に違和感がない方が多く、それ以外の地域では違和感を持つ方が多いそうです。(参考:ウィクショナリー「おる」、ウィキペディア「西日本方言」)

ビジネスマナー本やサイトでは「『おられる』は間違い」と書かれているものもあり、違和感を持たれる方がいらっしゃるので使わないほうが無難です。
「おられる」を普通に使う地元の方との会話ならば特に問題ありません。

私は愛知県民で弊社は富山県にあるため入社とともに富山に引っ越してきたのですが、当初富山の方が「~おられる」と言われるのを聞いて「え、『オラレル』って何?方言?」と驚いたものです。

しばらくして「おられる」に慣れたころに愛知の知り合いと話したとき「おられる」を使ったのですが、「『オラレル』って何?」「『おられる』は方言の『おる』に『れる』を付けたものだから正しい日本語じゃないよ(※この意見は間違い)」と言われて「そう言えば自分もそういう反応だったな」と思ったことがあります。

どうしても「いる」と「いらっしゃる」の間の表現を使わなければならなくなったとき以外は「おられる」は使わないほうが良いかと思います。

まとめ

今回出てきた間違えやすいポイントは

  • ら抜き言葉は使わない
  • 二重敬語は使わない
  • 「おられる」は間違いではないが控える

です。

次回は話し言葉には現れない、書き言葉の表現について書きたいと思います。
正しく読みやすい文章が書けますか?|校正中によく見かける注意点(中)

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こんぎつね

チューリップ企画デジタルコンテンツ事業部にてサポートとインターネット業務にも携わっているこんぎつねです。(こんぎつねの記事一覧へ)チューリップ企画に来る前は愛知県で主に60代以上向けのイベントを運営していました。人について学ぶのが好きで、大学では生物学を専攻しました。よく読む本のジャンルは心理学、脳科学など人の心や体の行動に関するものが多いです。ブログもそれらの本を参考に、この悩みは 仏教ではこう解決するという内容を専門語を使わずになるべくわかりやすい言葉で発信することに心がけています。もっともっと多くの方の悩み疑問にお答えしたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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