実はよく知らなかった日本の風習「お盆」|お盆と先祖供養の関係とは

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こんにちは。”伝わる”技術研究家のみさきです。

まもなくお盆休みですね。

お盆に墓参りに行くのは国民の一大行事の一つのようになっていますが、近年は墓参りに行く人も減少しているようです。2017年の楽天リサーチの結果によると、お盆にお墓参りに行く人は29.2%でした。

私もお盆だからと自らお墓参りに行くことはあまりなく、誘われたら行くという程度でした。

特定のお盆の時期にだけ、先祖の魂がこの世に戻ってくるということが、どうも腑に落ちずにいたからです。

そこでこのたび先祖供養を正しく理解したいと思い、「お盆」について調べてみました。

まず「お盆」とは、仏教でどう教えられているのでしょうか。

仏典に基づく「お盆」の由来

お盆は、お釈迦さまの教えを書き残されたお経の一つ『盂蘭盆経』(うらぼんきょう)に由来しています。

盂蘭盆を略して、今日では「お盆」と呼ばれるようになりました。

『盂蘭盆経』(うらぼんきょう)には、お釈迦さまの十大弟子の一人であった目連尊者(もくれんそんじゃ)の次のようなお話が説かれています。

お釈迦さまの十大弟子の一人に目連(もくれん)という人があります。
目連は、神通力(じんつうりき)第一といわれ、特に孝心の深い人でありました。

その目連が、神通力を得て三世(さんぜ)を観ました時に、痛ましいことに亡き母が餓鬼道(がきどう)に堕ちて苦しんでいることが分かったのです。
彼は深く悲しんで、直ちに、鉢に飯を盛って母に捧げましたが、喜んで母がそれを食べようとすると、たちまち、その飯は火炎と燃え上がり、どうしても食べることができません。

鉢を投げ捨てて泣きくずれる母を、目連は悲しみ「どうしたら、母を救うことができましょうか」と、お釈迦さまにお尋ねしました。

その時、お釈迦さまは、「それは、そなた一人の力では、どうにもならぬ。この7月15日に、飯、百味、五果などの珍味を、十方の大徳、衆僧に布施しなさい。布施の功徳は大きいから、母は餓鬼道の苦難からまぬがれるであろう」と教えられました。

目連が、お釈迦さまの仰せに従ったところ、母は、たちどころに餓鬼道から天上界(てんじょうかい)に浮かぶことができ、喜びの余り踊りました。

*神通力:人間の考えの及ばぬ、霊妙自在の力。
*三世:過去世、現在世、未来世のこと。
*餓鬼道:食べ物も飲み物も、炎となって食べられず飲まれもせず、飢えと渇きで苦しむ世界。
*天上界:迷いの世界の中では、楽しみの多い世界。

お釈迦さまが言われた旧暦7月15日は今でいう8月15日にあたり、この日に先祖供養をする習慣がいつしか生まれ、「お盆」と言われるようになりました。

では日本における「お盆」の始まりはいつからなのでしょうか。

日本のお盆行事の始まり

日本で初めてのお盆行事と思われる事跡は、日本書紀の時代に遡ります。
推古天皇(606年)が「この年から寺ごとに毎年4月8日と7月15日に斎(とき)を設ける」と記録したと残されています。

「斎(とき)」とは今日でいう仏事のことです。

4月8日はお釈迦様のご生誕のお祝い、7月15日がお盆です。

当時は宮中内での行事でしたが、奈良・平安時代になると公家に広まり、一般庶民に普及したのは江戸時代といわれています。

外国のお盆

日本のお盆の起原をみてきましたが、少し外国のお盆事情に触れたいと思います。

スリランカのお盆

仏教国のスリランカでは「お盆」の習慣はないとのこと。

輪廻転生(りんねてんしょう)するのだから、亡くなった後はこの世との繋がりは一旦終わりであり、亡くなった家族とも年に一回、お盆に会えるという発想は仏教ではないと日本の仏教を批判しています。

中国のお盆

日本仏教は中国からの影響が大きいと聞きます。

中国ではお盆のことを”盂蘭節”とか”鬼節”と呼ばれています。

先祖を祀り、お墓参りに行くという慣習は日本と共通しているようです。

”鬼節”と呼ばれる由来は、この日に閻魔大王が冥界の門を開けて、冥土にいる鬼の魂がこの世に出てくるという伝説が元で、中国で鬼とは亡くなった人という意味があるそうです。

日本の各宗派のお盆

では日本の各宗派はどうでしょうか?

仏教の各宗派でも、お盆についての見解は違ってきますが、天台宗・真言宗・曹洞宗・臨済宗などのお盆はほぼ共通していて、浄土真宗だけは大きく違っているなと感じました。

多くの宗派(天台宗・真言宗・曹洞宗・臨済宗など)のお盆

天台宗・真言宗・曹洞宗・臨済宗などはお盆を重視します。

前述の目連尊者(もくれんそんじゃ)の故事をもとに旧暦7月15日の前後数日間をお盆の時期とし、我が家に迎えた先祖の霊を供養し、家族と亡き人が共に過ごす期間と位置づけています。

先祖の霊を家にお迎えする「迎え火」で始まり、あの世へ送りだす「送り火」で終わります。

供養の仕方としては、各家庭で精霊棚(しょうりょうだな)を作り、先祖の霊が行き来するために、なすやきゅうりを馬や牛に見立てて飾ります。

菩提寺の住職がその精霊の冥福を祈るために各家庭を訪問し、読経する棚経(たなぎょう)があります。

宗派や地域によって、お盆飾りや作法の違いはありますが、お盆の期間中、追善供養をすることはほぼ同じです。

浄土真宗のお盆

浄土真宗のお盆は他宗と大きく異なることがわかりました。

浄土真宗では、お盆に先祖の霊のために迎え火や送り火をたいたり、精霊棚、精霊馬を用意するようなことはありません。

お盆は亡き先祖をしのぶと共に、苦しみ悩む私たちが仏教を聞き、本当の幸せに向かうご縁にしなさいよと勧められています。

なぜ仏教を聞くご縁とするのか、「お盆」の由来である「盂蘭盆(ウラボン)」の意味からわかります。

「盂蘭盆(ウラボン)」とは古いインドの言葉で、中国の言葉でいうと倒懸(とうけん)ということ。
倒懸(とうけん)とは「倒さに懸かれる者(さかさにかかれるもの)」ということです。

浄土真宗では、目連尊者の母のように死後、苦しんでいる人だけでなく、生きているすべての人も「倒さに懸かれる者」と教えられています。

何が倒さ(さかさ)なのかというと、「すべてのものは無常なのに、いつまでも続くと信じている」その思いがさかさまなのだと教えられています。

財産、健康、家族、才能など、いつか崩れ去る無常のものなのに、いつまでも続くと思い込み、やがてその思いが逆さまだったことが思い知らされ、苦しみ悩む。それでもなお、無常のものを、今度はいつまでも続くと思い込み、しがみつく。このようにしてずっと苦しみ続ける。

それが人間の実態であり、そんな「倒さに懸かれる者を救う方法」が説かれている仏教を聞くことが大事ですよと説かれています。

まとめ

いろいろ見てきましたが、私は浄土真宗のお盆が最もしっくりきました。
日常では、これまで育ててもらった父母や祖先のご恩をじっくり考えることがありませんが、お盆の時期、心を静かに、自己の心の在り方を問うことが仏教の教えにかなうように感じました。

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みさき

はじめまして、みさきです。 チューリップ企画で「動画で学べる仏教」を制作しています。 10年間、旅のプランニングの仕事を通して、幅広く多くの方々とお話してきました。旅には各々の想いがあり、じっくりとお話をしながら旅のお手伝いをしていきます。人と関わる中で人間関係で悩んでいる人が多いことを知りました。 8年前に仏教とご縁があり、人間の心についてずば抜けた洞察の深さに感動して、今の仕事に至っています。日常の悩みについて仏教ではどう教えられているかを発信してゆきたいと思います。
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