「自分もあと10年か」76歳になって、人生の終盤だからこそ知りたいこと

「自分も、あと10年くらいかな」
今年76歳になる男性が、そう話してくれました。
三人兄弟のうち、二人の弟さんはすでに亡くなっています。
若い頃、一緒に酒を飲んだ友人たちも、一人、また一人と亡くなっていきました。
身近な人の死が重なるにつれて、これまでどこか遠い話だった「自分の死」が、少しずつ現実のものになってきたといいます。
死んだらどうなるかなんて、考えても仕方がない
その男性は、以前は、仏教で「死んだらどうなるか」が問題にされると聞いても、あまり関心がありませんでした。
死後のことなど、考えても分からない。
考えたところで、気持ちが暗くなるだけではないか。
そんなことより、今を楽しく生きたほうがいい。
そう思っていたそうです。
これは、多くの人が感じることではないでしょうか。
私たちは普段、できるだけ「死」を遠ざけて生きています。
仕事のこと、家族のこと、趣味のこと。
目の前には考えることがたくさんあります。
元気なうちは、「死んだらどうなるのか」という問いに向き合わなくても、毎日は過ぎていきます。
けれども、年齢を重ね、身近な人を見送るようになると、同じようにはいかなくなります。
「あの人も亡くなった」
「弟も二人ともいなくなった」
「次は自分かもしれない」
そう思ったとき、「死」は初めて、自分自身の問題として迫ってきます。
自分の死が近づいて、仏教を聞きたくなった
彼は最近、仏教の話を聞いてみたいと思うようになったといいます。
若い頃には必要だと思わなかったことが、今になって気になり始めた。
それは、単に不安が強くなったからだけではないのかもしれません。
自分の人生を振り返り、
「これまで何のために生きてきたのだろう」
「自分はこのまま死んでいくのだろうか」
「死んだら、自分はどうなるのだろう」
そんな問いが生まれてきたからなのかもしれません。
死を考えるというと、人生の暗い部分ばかりを見るように感じます。
けれども、本当にそうでしょうか。
自分が必ず死ぬ存在だと知ることは、同時に「では、残された時間をどう生きるのか」と問うことでもあります。
限りがあると知るからこそ、今まで何となく過ぎていた一日が、違って見えてくることがあります。
会える人には、いつまでも会えるわけではありません。
やりたいと思っていることも、いつでもできるわけではありません。
自分自身の人生にも、必ず終わりが来ます。
死を見つめることは、人生を諦めることではなく、むしろ「今をどう生きるか」を真剣に考えることにつながるのだと思います。
親鸞聖人も「死んだらどうなるのか」に苦しまれた
浄土真宗を開かれた親鸞聖人は、9歳で出家されたと伝えられています。
親鸞聖人が生きられた時代は、飢饉や争いなども多く、死が今よりずっと身近にあった時代でした。
そして親鸞聖人は「死んだらどうなるのか分からない」という心の問題を、9歳で問われたのです。
その後、29歳で法然上人と出遇い、法然上人の元で仏教を聞かれていきます。
仏教が問題にしているのは、単に「死について考えましょう」ということではありません。
必ず死んでいかなければならない私たちが抱える「死んだらどうなるか分からない」という根本の不安に向き合い、その解決が教えられているのです。
死を考えるのは、暗くなるためではない
私たちは、「死」という言葉を聞くだけで、できれば考えたくないと思います。
けれども、死は考えなければ来ないものではありません。
考えても、考えなくても、いつか必ず自分の番が来ます。
だからこそ、自分の死について考えることは、決して縁起の悪いことでも、暗いことでもないのではないでしょうか。
むしろ、
「私はどこへ向かって生きているのか」
「この人生で、本当に大切なものは何なのか」と、自分の人生を振り返る大切な機会になります。
若いときには遠く感じていた問いが、年齢を重ねると、切実な問いに変わることがあります。
その問いから逃げるのではなく、一度立ち止まって向き合ってみる。
仏教には、そんな私たちにとって避けることのできない「死」の問題が、真正面から教えられています。
死を考えることは、人生を暗くするためではありません。
限りある人生を、本当に生きるための問いなのだと思います。
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みさき
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