大人になっても苦しむ「愛着障害」とは|三つ子の魂百までを理解して愛着障害を防ぐ
(*この記事は約5分で読めます)
はじめまして。こころ寄り添う研究科の九条えみです。
親子間で愛着形成が上手くいかないと、愛着障害になる場合があります。
きっと、この記事にたどり着いたあなたも悩み苦しまれていることと思います。
私自身も長年にわたり辛い思いをしてきましたが、見方が変わってから気持ちがずいぶんと楽になりました。
ですので、大人になってからでも愛着障害は解消できると実感しています。
この記事を読まれて、何か得られるものがあれば大変うれしく思います。
目次
愛着障害(あいちゃくしょうがい)とは
そもそも愛着とはどういう意味でしょうか。
イギリスの精神科医ボウルビーによると、人間は乳幼児のころに他人への愛着が作られると言われています。
乳幼児は親と一緒にいることで安心感を抱き、親も愛情を持ってそれに応えるのが普通(適応的)ですよね。
このような親子のスキンシップ(愛着行動)が繰り返されることで、子どもは他者に対して安心感・信頼感を獲得するようになります。
他者(主に母親など)に対する安心感・信頼感は愛着となり、
- 恐怖や不安などのマイナスな感情を抱いたときの安全基地になる
- 危機がないような状況でも、「いつでも帰る場所(安全基地)がある」という安心感を持つことで、外界を自由に探索できる
といった精神的作用を持つようになります。
親子のスキンシップが乏しくなると起こるのが愛着障害(あいちゃくしょうがい)です。
一般的に愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じる状態のことを言います。
主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子どもとの間に愛着がうまく芽生えないことによって愛着障害は起こります。
虐待・ネグレクトや離別だけでなく、最低限の世話はするが無関心・放任であったり、兄弟差別や、親自身が愛着障害であるとそれが子どもに引き継がれたりするそうです。
大人になっても尾を引く「愛着障害」
愛着障害が治らないまま大人になると、人格形成や心の持ちようなどにおいても影響を与える大きな要因となります。
大人の愛着障害の特徴は主に3つ挙げられます。
◇情緒面
- 傷つきやすい
- 怒りを感じると建設的な話し合いができない
- 過去にとらわれがち、過剰反応
- 0か100かで捉えてしまう
- 意地っ張り
など
◇対人関係
- 親などの養育者に対して敵意や恨みを持つ、または過度に従順になったり、親の顔をうかがう
- 親の期待に応えられない自分をひどく責める
- 人とほどよい距離がとれない
- 恋人や配偶者、また自身の子どもをどう愛すればいいかわからない
など
◇アイデンティティが確立できない
- キャリア選択がうまくできず時間をかけた割にわずかな見聞や情報で決めてしまう
- 自分の選択に対する満足度が低い
他にもうつ病や心身症、不安障害、境界性パーソナリティ障害などの発症原因になってしまうことがあるそうです。
(参考: 愛着障害とは? 愛着障害の症状・治療法・愛着を築く方法をご紹介します!)
愛着障害を防ぐには母親に全てを負担させないこと
子育て本を読むと「3歳までに自己肯定感が育まれ、心の土台がしっかりした子はしつけも教育も積み上がっていく。だから3歳まではきちんと甘えさせることが大事」とあります。
赤ちゃんは右も左も分かりません。
ですが、お母さんも母親1年生からスタートするのです。
夜中でも2,3時間ごとに泣き声で起こされ、母乳をあげる。
慢性的な睡眠不足のなか、料理や洗濯などの家事をこなす。
赤ちゃんが体調を崩したときはどうすればいいかとにかく不安。
などなど、初めてのことだらけでお母さん自身の余裕が無くなりやすいです。
だからこそ、周囲のサポートが大事になってきます。
父親や祖父母の協力がなければ、どこかでお母さんは限界に達するでしょう。
育児休暇から仕事復帰したママさんには、子育てとの両立が取れるような勤務時間・体系を提供するという会社の理解も大事でしょう。
そして地域の子育て支援施設を利用して、ママ友を作ったり、専門家に相談するというフォローも心理的負担を軽くさせますね。
お母さんに余裕があれば、子どもの要求に対応しやすくなります。
抱っこなどのスキンシップや、顔を見合わせてのコミュニケーションも大らかな気持ちで取り組むことができそうですね。
それが結果的に子どもに安心感を与え、愛着障害を防ぐことになります。
「子育ては女の仕事」が禁句な理由
父親が単身赴任などで家にいる頻度が少なく、両親とも独立して暮らしている場合は、母親一人が子育ての負担を抱えることも少なくありません。
その上、父親までもが「子育ては母親の役割が重要なんだから」「子育ては任せているんだから」と言えば、どうなるでしょう?
子どもが癇癪(かんしゃく)を起こしたり、問題を起こしたりすると
「自分の子育てが間違っていたのではないか?」
「こんな子どもに育ってしまったのは母親である私がしっかりしていないからだ…。」
と自信を失いやすいでしょう。
母親が子育てに自信が無くなってしまえば、子どもに接するときにも不安や恐怖を抱きます。
子育てのやる気が無くなり、余裕がありませんから子どもが泣けばイライラしますし、子どもに甘えられても疲れていたり時間が無かったりという理由で思うように構(かま)ってあげられなくなります。
子どもが愛情を受けるには、母親の自己肯定感が大切なのです。
そして母親の自己肯定感は、大変なときに周囲からのサポートがどれほどあるかによって左右されるのです。
だからこそ「子育ては女の仕事」などと絶対に言ってはいけないと思うのです。
初めのほうでボタンが掛け違うと、その後もずっとずれていきます。
気付いて修正するのは早ければ早いほど良いでしょう。
克服できないまま大人になれば、対人関係や心理的弱さから、打たれ弱く生きるのに自信のない人間になってしまいやすくなるからです。
子どもにとって、血の繋がった母親が一人であれば、父親もたった一人です。
オムツ替えやお風呂の世話が得意でなかったとしても、奥さんの孤独や不安な気持ちを聞いてあげるだけで肩の荷が下りたように楽になるはずです。
二人三脚で苦労を乗り越えるからこそ、喜びも2倍、3倍と大きくなるのではないでしょうか。
私と同じような境遇で育ってきた人たちは、ボランティアで幼稚園生から大学生までの似た境遇の子どもたちが健やかに育つように様々な取組みをしています。
きっと痛みが分かるからこそ、同じ轍(てつ)を踏んでほしくはないのでしょう。
愛着障害の解消のために知っておきたいこと
相手を大切にするためには、まず、自分自身が大切にされた経験が必要だと言われます。
「自分は大切な存在なんだ」「価値ある存在なんだ」という気持ちを自己肯定感といいます。
愛着障害とは、幼少期に何らかの事情で養育者から適切な愛着(スキンシップなど)が与えられなかった場合に出てくると書きましたが、そういう経験が「自分なんて生きていても仕方がない」と自己の存在価値への揺らぎにつながるのだと思います。
「生きていても無意味」と自暴自棄になってしまえば、自分を大切にすることも、相手を大事に思うことも難しくなるでしょう。
人間に生まれたことを喜べたなら、たとえ幼少期に辛い思いをしたとしても、悲しみを糧(かて)にして相手の幸せを念じることや、自分も幸せになるために頑張ろうという意欲につながります。
考えてみると、地球上には確認されているだけでも130万種類以上の生物が存在すると言われています。しかも、アリ一つをとっても、全人類の体重と全てのアリの総量は等しいと言われるほど、圧倒的にアリの数が多いですよね。
種類からいっても、数からいっても人間に生まれる確率は非常に低いことが分かります。
「まんが日本昔ばなし」というアニメが私は好きなのですが、そのエンディングテーマが「にんげんっていいな」です。
いいな いいな
にんげんって いいな
おいしいおやつに ほかほかごはん
こどもの かえりを まってるだろな
ぼくもかえろ おうちへかえろ
でんでん でんぐりかえって
バイ バイ バイ(略)
いいな いいな
にんげんって いいな
みんなでなかよく ポチャポチャおふろ
あったかい ふとんで ねむるんだろな
ぼくもかえろ おうちへかえろ
でんでん でんぐりかえって
バイ バイ バイ
人間は温かいご飯を食べることができます。お菓子も食べることができます。
程度の差はあれ、雨風をしのぐ家があります。
動物は冷たい水で水浴びをするだけですが、人間は温かいお風呂でゆっくりすることができます。
動物は暗い洞穴や、不安定な木の枝に巣を作って眠ります。しかもいつ敵に襲われるか分かりません。草食動物のキリンは、常にライオンやトラなどの肉食動物に警戒しなければならないので、1日の睡眠時間が2時間です。しかも身体を丸めて完全に眠るのはわずか20分といわれます。
一方、人間は温かい布団でグーグーと眠ることができます。
平安時代の源信僧都(げんしんそうず)というお坊さんは、苦しみの激しい三つの世界から離れて人間に生まれたことは喜ぶべきことなんだよ、と次のように教えられています。
まず三悪道(さんあくどう)を離れて人間に生るること、大きなる喜びなり。
身は卑しとも畜生(ちくしょう)に劣らんや。
家は貧しくとも餓鬼(がき)に勝るべし。
心に思うことかなはずとも地獄の苦に比ぶべからず。 (横川法語)
友人や結婚相手を選ぶことはできても、生まれるまではどんな親を持つか、どんな子供を持つかは分かりません。
「なぜこの両親の元に生まれたのか?」
「なぜこんな子供を持たねばならなかったのか?」
親子関係で心に傷を負ったり、時には殺人まで起こしてしまうケースもあります。
今この記事を読まれている方の中にも、悲しいこと辛いことが沢山あったという方もあると思います。
私も父が単身赴任で、子育てはほとんど母一人の手で育ってきました。
友人の家庭と違うことに対するコンプレックスや寂しい気持ちは抱えていたと思います。
この気持ちをどうしたら良いんだろうと悩むこともありました。
その時に、次の言葉を見て心が救われた思いがしました。
これは、お釈迦さまの時代に「自分なんて生まれてこなければ良かった」と悲しむ少女に対して、お弟子が思った言葉です。
人生は、一つ持っていると思えば、ほかの大事な何かが欠けていることがある。
完璧な生きざまなどはないものだな、と修行者は痛感した。
だがその欠け目が、人を真実に向かわせる大きな勝縁になることもよく心得ている。
どうかあの少女に仏縁あれかし、衷心から念ずるしかなかった。
(『お釈迦様物語 なぜ生まれてきたのか 修行者と少女』より)
完璧な生きざまなどない。
人それぞれに悩みの種が違うだけで、私には分からない悩みで苦しんでいる人もある。
でも、その悩みが受け心となって、人の痛みが分かったり、人に優しくしようという気持ちになることも実感しています。
自分の負った悲しみも痛みも、捉え方次第では人生を正しく歩ませてくれる助けとなるのだと感じるようになりました。
恨み呪いの人生を過ごすより、感謝の毎日を送れるように心がけるだけでも、新たな人生が開けてくるのだと思います。
愛着障害に関連して「毒親」という言葉もあります。
毒親についての記事はこちらをお読みください。↓↓↓
毒親に囚われない生き方のヒントはこちらをお読みください。↓↓↓
九条えみ
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