生きるってどういうこと?「食と仏教」から人間を考える

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こころ寄り添う研究家の九条えみです。

魚をまるごと一匹買ってさばくことがあるのですが、じかに手を触れて調理すると「生き物の命を奪って生きながらえてるんだなぁ」としみじみ感じます。

スーパーに並ぶカット済みの肉や魚ばかり目にしていると、野菜などと同様に「食材」を買っている感覚になりますが、数日前までは親や兄弟と一緒に生活していたんですよね。

生きるってどういうことなんだろう?としみじみ思いました。

便利な生活の裏にある犠牲とは

宇多田ヒカルの歌に「誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ」という歌詞があります。

私たちの便利な生活、快適な生活の裏側にどんな涙があるのでしょうか。

当社で扱っている『月刊なぜ生きる』にこんな記事がありました。

私たちは、他人の苦しみ、動物の苦しみに、「雨のしずく」ほどでも関心があるでしょうか。

例えば毎日、飲んでいる牛乳は、誰のために作られたものでしょうか。人間が飲むためではありません。お母さんの牛が、子供に飲ませるための乳です。しかし、それを子牛に飲ませてしまったら、人間が飲めなくなってしまいますから、牛の子供は、お母さんから、引き離されてしまいます。

ところが「牛」というのは「社会性哺乳類」といわれ、人間と同じような感情があります。だから子供の牛は、お母さんと一緒にいたいですし、他の子牛と遊びたいのです。それを無理矢理、親や友達から引き離はなして、肉体的にも精神的にも苦しめているのです。

また「豚」というと、目の前の餌にしか興味がないと思われるかもしれません。しかし実際には、豚は大変、好奇心の強い動物ですから、いろいろな所に行きたいのです。それなのに人間が、狭せまい所に閉じ込めて、振り向くことさえ、できなくしています。

(中略)

私たちが、おいしいものを食べ、便利な生活をして、「幸せだなぁ」と思えるのは、他人の苦しみなど、きれいさっぱり、忘れているからです。

他の人間や動物が、どれだけ苦しんでいようと、そんなことに雨粒ほどの関心もないとすれば、自分さえ幸せならよいという、残酷で、無慈悲で、冷たい人間です。

(『月刊なぜ生きる』令和元年9月号より)

命は平等と説く仏教

仏教では人間の命も、動物の命も、虫の命も、命の価値は平等と説きます。

私たちは動物を食べるのを当たり前と思っていますが、牛や豚、鳥や魚は人間に食べられて当然とは思っていないでしょう。

いけすの魚が網から必死に逃れようと泳ぐのは、死にたくないからでしょう。

殺虫スプレーをかけられた虫がジタバタもがくのも死が苦しみだからです。

もし魚や虫を殺しても悪ではないと言うならば、えん罪で死刑判決を受けても文句を言えないことになります。

かといって、私たちは肉を食べなくては生きていけないのも事実です。

菜食主義者も、食べている野菜に農薬がまかれていれば大量の虫を殺していますし、歩いて虫を踏みつぶすこともあるでしょう。

殺生せずしては生きていけないどうにもならぬ恐ろしい業(ごう)を抱えて生きているのが私たち人間の姿なのだと仏教では教えられます。

仏教はなぜ人間の悪を説くのか

害虫は駆除しないと都合が悪いし、肉や魚を食べるのも生きていくには仕方がないと思います。

殺生しているなど考えていては楽しく生きていけませんから、そんなことを忘れて美味しい美味しいと喜んでいます。

目を背けたいことに、なぜ仏教はメスを入れるのでしょうか?

それは、本当の幸せになるためです。

自分自身が何者か分からなければ、自分が本当に満足できる幸せも分からないからです。

それはちょうど、進学先や就職先を決めるときに、自己分析をするようなものです。

自分自身の得意・不得意が分からなければ、満足のいく進学先も就職先も決められないでしょう。

仏教で教える人間の姿は、殺生せずしては生きられない、どうにもならぬ恐ろしい業を抱えたありのままの姿です。

私たちはテレビや新聞で騒がれている犯罪者だけが「悪人」と思っていますが、仏教では「すべての人間は悪人」と言われます。

と、同時にこんな言葉もあります。

善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや 『歎異抄(たんにしょう)』

(善人でさえ救われるのだから、まして悪人は、なおさらだ)

この言葉の意味については、「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」の『歎異抄』の謎を解くで詳しく解説しています。

「生きるってどういうこと?」とふと考えた時に、「今まで家族のため、生きていくために、ただ働いて生きてきただけだった」と思われる方もあるかもしれません。

「生きるために生きる」について考えてみたいと思います。
「生きるためだけに働いてるな、生きてるなぁ」と思う時に、まず大切な生きる方角

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九条えみ

チューリップ企画では、お客様サポートおよびウェブでの情報発信を担当しています。仏教を学んで約10年。仏教の視点からお悩み解消のヒントをご紹介できればと思います。
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