60歳を目前にして持病や介護に追われる女性の体験談から「生きる意味」を問う

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こころ寄り添う研究科の九条えみです。

人生100年と言われる時代になりました。

昔はあまり聞かなかった「介護」という言葉が、いつの間にかテレビや新聞でよく見聞きするようになりました。

私は仕事柄、60代以上の方とお話しする機会が多いのですが、80歳、90歳以上の親を、60代70代の自分がお世話するので大変だという話を様々な人から聞きます。

「自分も足腰がだんだんと弱ってくる中で介護するので、どっちが先に倒れることやら(笑)」と冗談まじりに言われた方もありました。

60歳を目前にしてますます苦しみがやってきた女性

特に印象的だった59歳の女性をご紹介します。

私は死ぬまで完治しない、薬が離せない精神的な疾患があり、その中で両親の介護をしています。

兄弟は関東に行ってしまっていて、夫がサポートしてくれていますが、私が見なければならない、という中で、その渦中では腹も立ったり、恨みが出てきたりで、心が疲れてきます。

本質的なしなければならないことを忘れたりします。

今生(こんじょう)の命の中でどこまで知りえるかわかりませんが、本当の真実に出会えたら幸せだろうと思います。

そういう苦しみは逃れられないのでしょうが、死ぬまでに少しでも知りえたいと思います。

苦しみが縁となって、真実を求める気持ちが起きたのだと思います。

四苦八苦の一つ「老苦(ろうく)」とは

仏教を説かれたお釈迦様は、人の苦しみを8つに分けて教えられています。

四苦八苦(しくはっく)と呼ばれるものです。

四苦とは生苦(しょうく)・老苦(ろうく)・病苦(びょうく)・死苦(しく)

ほかに、愛別離苦(あいべつりく)・怨憎会苦(おんぞうえく)・求不得苦(ぐふとっく)・五陰盛苦(ごおんじょうく)の4つを合わせて四苦八苦です。

四苦八苦の2番目に挙げられる 老苦(ろうく)とは、老いる苦しみです。

「いつまでも若く健康でありたい」と願っています。

しかし、時間を巻き戻すことは誰にもできません。私がお聞きした老苦の例をいくつか挙げてみたいと思います。

・目はかすみ、新聞や会社の資料を読むのも一苦労

・耳は遠くなって、家族とのコミュニケーションも容易ではない

・腰は曲がって、前が見えづらい

・値段の張る化粧品を使って手入れしても、年々増えていくシワ

・手は震えて、財布から小銭を取り出すのもままならない

・足はひょろつき、段差がなくてもつまづいてしまう

・トイレは近くなり、落語や演劇、コンサートに行っても集中できない

などなど、若い頃にはなんとも感じなかった日常生活が、こんなに大変で苦しい事なのかと言われる方もあります。

お釈迦様が出家された理由の一つは「老苦」だった

お釈迦様が、太子という地位を捨て出家を決意された時のエピソードがあります。

お釈迦様は、約2600年前に浄飯王(じょうぼんのう)という王様の子供として誕生されました。

悉達多(シッタルタ)と名付けられた太子は、幼い頃から文武ともに優秀で、健康にも恵まれ、太子として将来の地位は約束されており、何不自由のない生活を送られていました。

ところが、そんな太子が成長するにつれ、深刻な物思いにふけられるようになっていきます。

心配した王は、何とか明るい太子にしてやりたいと、19歳で国一番の美女といわれたヤショダラ姫と結婚させ、さらに、春夏秋冬の季節ごとに御殿を造らせ、500人の美女をはべらせました。しかし、太子の暗い表情は一向に変わりませんでした。

ある日、意を決した太子は、父王に手をついて

“城を出て、まことの幸福を求めさせてください”と頼まれました。

驚いた浄飯王(じょうぼんのう)、

「一体、何が不足でそんなことを言うのか。

おまえの望みはなんでも叶えてやろう」

「それでは父上、申しましょう。私の願いは3つです」

「3つの願いとは何か」

不審そうに 浄飯王(じょうぼんのう)が聞くと 悉達多(シッタルタ)太子は、キッパリとこう答えられました。

私の願いの1つは、いつまでも今の若さで年老いないことです。

望みの2つは、いつも達者で病気で苦しむことのないことです。

3つめの願いは、死なない身になることです

それを聞いた 浄飯王(じょうぼんのう)は、

「そんなことになれるものか。

無茶なことを言うものではない」

と、あきれ返って立ち去ったといわれます。

健康、財産、地位、名誉、妻子、才能などに恵まれていても、やがて全てに見捨てられる時が来る。

どんな幸福も続かないではないか……

この現実を深く知られた太子は、心からの安心も満足もできなかったのでしょう。

「老いや病と闘ってまで生きる意味」をさとられたお釈迦様

「老いや病魔と闘ってまで、なぜ生きなければならないのか?」

「生きた先に、良いことが待っている保証はあるのか?」

「この無常の世にあって、どうしたら本当の幸福になることができるのか」

人生をまじめに凝視されたお釈迦様は、29歳2月8日に、夜中ひそかに城を抜け出し、出家されたのです。

そして私たちの想像もできないほど厳しい修行を6年間なされ、35歳の12月8日に、仏のさとりを成就(じょうじゅ)なされたのです。

それから80歳でお亡くなりになるまでの45年間、

生きる意味も分からず苦しみ悩むすべての人に、絶対に崩れない壊れない本当の幸せがある。

この絶対の幸福になることこそ、人間に生まれた目的なのだよ

と教え続けられました。

まとめ

2015年時点での日本人の平均年齢は46.35歳と世界トップです。

今後ますます「老苦」に直面する人が増えるのでしょう。

苦しみがやってきても、そこを乗り越えて生きるのは何のためか。

お釈迦さまが教えられた「絶対の幸福」について、もっと掘り下げてみたいと思います。

お釈迦さまが説かれた絶対の幸福|底抜けに明るい心の長者になれる

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九条えみ

チューリップ企画では、お客様サポートおよびウェブでの情報発信を担当しています。仏教を学んで約10年。仏教の視点からお悩み解消のヒントをご紹介できればと思います。
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